江戸時代、なかば。仙台を出航した伊勢丸は突風に流される。渇きと飢えと闘いながらの百日間の漂流。その果てに、はるかな南国の島に漂着した。若き水夫・孫太郎の冒険が始まった。灼熱の太陽。奴隷の日々。殺戮と恋。力尽きて死んでいく仲間たち。望郷の念。島から島へと流転を続けながら成長していく孫太郎の青春。著者が新しい地平をめざした長編時代冒険小説。
書評・レビュー・感想
漂流記には、無人島でサバイバルして帰還するパターン(ロビンソン・クルーソー型)と異文化(異国)へ漂流して帰還するパターン(ガリヴァー型)がある。
前者のロビンソン・クルーソー型としては、吉村昭の「漂流」を読んでいてたので、今回は、後者のガリヴァー型として、本書を読んでみた。
本書の主人公は、福岡出身の船乗りだった「孫太郎」である。舟が遭難後、フィリピンのミンダナオ島に漂着し、その後、奴隷としてボルネオ島などへ送られるなど壮絶な生活が始まる。
漂流した島で、槍や鉄砲で武装した先住民に、すべての所持品を奪われ、奴隷にされたり、奴隷として売られたり、首狩り族に売首されそうになったりとかなり悲惨な状況から日本へ帰還する物語である。遭難時に20人ほどいた仲間は、自殺したり、殺されたり、病死したりなど、どんどん死んでいく中で生き残るためにサバイバルする孫太郎。
ミンダナオ島に漂流後は、スールー諸島などへ奴隷として転売されながら移動し、ボルネオ島南部のバンジャルマシンまで行くことになる。
本書は、実話に著者が創作を加えたものであるので、実際とは異なる部分もあるが、楽しく読めるようにカスタマイズされているので、十分楽しめると思う。
無人島へ漂流するのもきついが、奴隷になるのもきつい…
漂流物は面白いが、自分がその立場になったら日本に戻ってこられるだろうか…