金融史上最大の創造的破壊が始まった。
ベストセラー『クラウドの衝撃』『ビッグデータの衝撃』の著者による最新刊。
ゴールドマン、JPモルガン、ウェルズ・ファーゴなど欧米の先進事例に学ぶ「育成」「提携」「出資」「買収」戦略。
脅威か? チャンスか? 金融機関に忍び寄る“破壊者”の正体を徹底解説!「クラウド」「ビッグデータ」「IoT」の次に来るITビジネスの注目トピックス書。
金融機関のライバルは、もはや他の金融機関ではなく、他業界からの参入者である。特に、最先端のテクノロジーに加え、使いやすいユーザーインターフェースで利用者を虜にする術に長けたテクノロジー企業だ。
FinTechによって、融資・決済・海外送金などさまざまな分野で数々の革新的なサービスが生まれている。本書では、FinTechの定義、背景などの基本から、具体的なサービスの紹介、FinTechのコア技術である「ブロックチェーン」の解説、金融機関が考えなければならない対応策、各国政府の動きなど、さまざまな観点からFinTechの世界を詳細に分析。入門書にとどまらない、踏み込んだ深い分析、洞察を示している。大手銀行のほか、地銀や証券、保険、クレジットカード業界など金融業界の関係者、また金融業への参入を狙う通信業界やIT業界関係者も必読の書。
書評・レビュー・感想
「フィンテック」が話題となって久しいが、日本では2018年が多くの国民がフィンテックを実感する年になるかもしれない。フィンテックは、バズワードのように使われているので、本書のようなまとめを読んでおくと頭の整理によいだろう。
著者はフィンテックを大きく以下のように分類している。
1.新サービス
・ロボ・アドバイザー:富裕層&高齢でないマス向け
・P2Pレンディング
・クラウドファンディング
2.代替サービス
・ブロックチェーン系
・海外送金サービス
・モバイルPOS
・オンラインレンディング
3.補完サービス
・PFM
・ネオバンク
・API
国内の大手銀行が大規模なリストラを始めるなどすでに日本でも動きが出始めているが、既存の金融機関はいわゆる「土管化」を避けたいのだと思う。通信事業者が回線の維持に専念しなければいけなくなったように「土管化」すれば、差別化が難しくなり、あとは単純な価格競争になるからだ。ただ個人的には、既存の金融機関は口座の維持管理に限定される「土管化」に向かっていると思う。そして、サービス面というおいしい部分は、IT企業を中心としたフィンテック企業に持っていかれるだろう。
そのきっかけになるのは、API開放だと思う。現在、英国では、政府とフィンテック企業が熱心に既存金融機関にAPI開放を迫っている。政府を中心とした動きにより強制的にAPIが開放されることになれば、会計ソフトへ取引データをリアルタイムに投入できたり、納税が簡単になったりするだろう。すでにエストニアでは、マイナンバーのようなIDカードで、銀行口座へのアクセスや電子署名、納税、投票、法人登記などができるようになっており、税理士や会計士が過去の遺物になっているらしい。日本でも遅かれ早かれそれに近い形になるだろう。
良書!