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地方都市を考える 「消費社会」の先端から –貞包 英之 (書評・レビュー・感想)

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地方都市はどうなる?地方都市では何を幸福として、何を目指して生活が営まれているのか――日本の人口の4割が暮らす地方都市。ショッピングモール、空き家、ロードサイド、「まちづくり」……東北のある中都市を舞台に、この国の未来を先取りする地方都市の来し方行く末を考える。

「地方消滅」「地方創生」の狂騒のなかで地方発・地方都市論。

 第1章 地方都市に住まう。
 第2章 地方都市を移動する。
 第3章 地方都市に招く、地方都市で従う。
 第4章 地方都市で遊ぶ、地方都市で働く。

書評・レビュー・感想

山形市を舞台に、地方都市の現在と未来について考えている本である。
なぜ山形市か?著者が山形市に居住する山形大学の先生だから。まあ安易といっては安易。
そして、山形市の問題を一般化しすぎていると思う。フィードルワークも甘く、数値による根拠が薄い。
これで「地方都市論」というのはちょっとどうなのかな?と個人的には感じた。

地方都市に暮らす現地の人が考える地方論もいいが、考えるだけの時期はもう過ぎていると思う。すでに行動の時期または、行動した結果を検証し、次の行動に活かす時期だと思うが、著者はまだ考えている・・・考えるだけでは何も進まないと思うんだが….

東京や都会へ移動している層が偏っている「移動の階層化」は、移動の権利化と著者は呼んでいるが、権利というか、東京や都会にしか、高学歴や高収入層の居場所がなくなってきているだけかと思う。

ただ地方都市の「観光」に関する分析にはなるほどと思わされる部分もあった。

現在の地方都市は、伝統を創造し、架空キャラを捏造してまで自らをより「消費」される街としようとしていると分析し、例として、B級グルメやゆるキャラを挙げ、これらは、「地方の記号化」であり、プライドを売っていると指摘している。これは一理あるように思った。以前から「観光」というのが「プライドの切り売り」ではないか?と思っていただけに、その思いをよりいっそう強くした。なぜB級グルメやゆるキャラを作る必要があるのか?残念ながら他に売るものがないからである。京都は「記号化」しなくても「観光」という「プライドの切り売り」が出来るが、地方都市は、「記号化」なしでは、「プライドの切り売り」すらできないという指摘である。これはその通りだと思った。

そう考えると、「観光」というのは、「伝統がある都市」はそれを切り売りし、「伝統がない都市」はそれを新たに創造することによって切り売りしていると言い換えることが出来るのかもしれない。

まあエッセイと思えばいいかもしれない。


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