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中国4.0 –エドワード ルトワック (書評・レビュー・感想)

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中国4.0 暴発する中華帝国 (文春新書)
エドワード ルトワック
文藝春秋

2000年以降、「平和的台頭」(中国1.0)路線を採ってきた中国は、2009年頃、「対外強硬」(中国2.0)にシフトし、2014年秋以降、「選択的攻撃」(中国3.0)に転換した。来たる「中国4.0」は? 危険な隣国の未来を世界最強の戦略家が予言する!

戦略家ルトワックのセオリー
 ・大国は小国に勝てない
 ・中国は戦略が下手である
 ・中国は外国を理解できない
 ・「米中G2論」は中国の妄想
 ・習近平は正しい情報を手にしていない
 ・習近平暗殺の可能性
 ・日本は中国軍の尖閣占拠に備えるべし

書評・レビュー・感想

非常に勉強になった。
偏見の少ないガイダンスといえるだろう。

対中国で日本はどうするのがベストなのか?を知りたいと思い、本書を読んだ。

結論としては、

 ・シベリアを中国に渡さない
 ・日本からは中国に仕掛けない
 ・中国に対しては受動的封じ込め策をとる

上記を実行するのがベストということのようである。上記が実行できていれば、中国が大きくなればなるほど、日本に味方する同盟国の数は増え、アメリカだけでなく、最終的にはロシアからも支援が得られるとのこと。それは、つまり、中国が強大になってアジア地域を支配するというシナリオはまったくありえないということでもある。

なぜそうなるか?を知りたい人は本書を読んでほしい。

著者によると、ここ15年で中国は政策を3度変えていると述べている。
その3度は以下の通りである。

 ・中国1.0 – 平和的台頭(2000年~)
 ・中国2.0 – 対外強行路線(2009年~)
 ・中国3.0 – 選択的攻撃(2014年~)

そして、最後の中国3.0は、2015年9月に行われた習近平の訪米によって破綻したとのこと。
タイトルにある「中国4.0」であるが、著者は、それは以下の2点を実行することだと述べている

 ・「九段線」を引っ込める
 ・「空母建造」をやめる

そうするのが中国にとってベストシナリオであると述べているが、現在の中国にはそれが実行不可能であるとも述べている。非常に面白い観方だと思った。

著者が本書の中でいくつか例を出しながら説明しているのが、「大国は小国には勝てない」という戦略の逆説的論理である。これは、はじめてお目にかかった理論だったが、ある程度納得感があった。

著者が日本に進める以下の策についてであるが、

 ・シベリアを中国に渡さない
 ・日本からは中国に仕掛けない
 ・中国に対しては受動的封じ込め策をとる

シベリアを中国に渡さないためにもロシアと融和し、シベリア経済協力を進め、北方領土については主張を抑えることを薦めているのだろうと思われる。また日本から中国へ仕掛けないというのは、アメリカ以上に日本が対中国の言説をエスカレートさせてはいけないということだと思う。これは孤立化を避けろというアドバイスと認識した。最後の受動的封じ込め策であるが、どこまで現政権ができているのかもっとも不安な部分である。これはつきつめれば、尖閣の話である。著者は、あらかじめ合意・準備された対応を即座に実施することが重要と説いている。慎重に忍耐強い対応をしていると手遅れになるという指摘だと思われる。

日本には耳が痛い策も多いが現実的に効果があるのは認めざるを得ないだろう。
「何かを得るためには、何かを諦めなければいけない」ということだろう。

良書!


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