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「決め方」の経済学 –坂井 豊貴 (書評・レビュー・感想)

自宅に侵入者の群れがやってきて「この家は俺たちのものだと賛成多数で決まった」とやられたら、それは明らかにおかしいと思うだろう。ではイラク侵攻のきっかけとなった安保理決議1414はどうか。「多数決」と「暴力」のあいだに違いを見付けるのは、案外と難しい。

多数決を使うことは、子供の頃いつの間にか教わる。けれどその正しい使い方は、大人になっても教わることはない。これはなかなか不思議なことだ。

選挙をはじめ、マンション自治会や、取締役会や、教授会や、その他諸々の会議では、おそらく多数決がよく使われていると思う。だがそれでうまく人々の意思を汲み取れているのだろうか。そもそも「うまく人々の意思を汲み取る」とは、どういうことなのだろう。きちんと考えるには、かっちりした学問があるとよい。

本書では、『「決め方」の経済学』というくらいだから、決め方を経済学的に考える本だ。経済学では、人々が何を欲しているか、どのような生産ができるかといった情報を、まとめあげて1つの資源配分を与える関数として、市場をとらえる。それと同じように、人々の意思を情報としてまとめあげて、1つの集団的決定を与える関数として、決め方をとらえる。ただし本書を読むには、経済学はもちろん数学の知識は一切いらない。ごく一部を除き、計算としては小学2年生レベルの足し算と掛け算がたまに出てくる程度である。

もしあなたが、選挙や日常の会合で、意思決定がどうもうまくできていない、人々の大意とズレる結果をよく選ぶ、と感じることがあるならば、その理由が本書のなかに見つけられると思う。

書評・レビュー・感想

”「決め方」によって「結果」が変わる”というのがキーワードであるが、まさに、どのような「決め方」をすれば、どのように「結果」が変わるのかを教えてくれるのが本書である。

「決め方」の重要性がわかる。

ただ、すでに決められた「決め方」を変えるのはとても難しいとも感じた。

「決め方」よって、これだけ「結果」が変わるのだから、「結果」とは何だろうと思わされた。「結果」というのは「事実」というよりは、ある1つの「意見」とも思えた。

「選挙結果=民意」という嘘についても理解できた。
難しい内容をわかりやすく書いていてとても好感がもてた。

良書!


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